讃州志度道場縁起(第二幅)のあらすじ

 唐の国使(将軍か)は着いたが、珠は龍王に奪われたことを不比等は知らされた。唐使とともに、不比等は珠の奪われた海に来たが、そこが志度の浦であった。

 不比等はそのまま志度の浜(房前の浦)に残り、息の長い海人の娘を見つけて結婚した。三年がたって、二人のあいだには男の子も生まれた。

 不比等は妻に、ようやく身分を打ち明け、唐の皇帝から贈られた珠のことを話した。海深くに潜っていって何とか珠を取り返すことができないだろうかと尋ねた。海女は、不比等との契りの深さを思い、珠を取り返しに行くことを承知した。あいだに生まれた子の房前を藤原の跡継ぎにすることと自分の菩提を弔うことを願った。

 最初にまず珠の奪われたあたりに潜って龍宮の様子を見に行くことにした。帰ってきた海女は、昼夜とも見張りが厳しく隙がないと語った。命にかけてもと誓い、懇ろに契りを交わし、死後の供養を願って潜っていった

 海女からの合図を知って、海上の不比等らは海女を引き上げようとした

 それと知った龍王が追いかけてくるので、海女は胸乳をえぐって珠を隠した。

 しかし、引き上げられた海女は、龍王に手足を食いちぎられて命尽きてたおれた。不比等は死んだ海女を哀れに思い泣き、傷をあらためると、海女の胸の下に取り返してきた珠が隠されてあるのがわかった

 奈良の都に帰った不比等は、宝珠を造像なった興福寺の釈迦如来像の頭中に納めた

 それを尊いことと思い、龍王は、珠を守るために猿沢の池に移り住んだ⑱⑲

 海女の子の房前は十三歳で不比等から次第を聞かされ、志度の浜を訪れた

 冥土に迷う海女の声が聞こえ、墓を発見、房前は供養のため寺を修造し千基の石塔を建てた㉓⑭

描かれた人と場所と出来事

志度の浦

志度の浦で不比等が息の長い海女と結婚し、息子も生まれたので玉取りを頼む。


龍宮

龍宮に奪われた珠の様子を見に行き、東門の外から珠の納められている十三重の水晶の塔を見上げる海女。

海女が南門から中の様子をうかがう。

腰に縄を付け海底に行った海女を船上で待つ。

不比等たちが龍王に手足を食いちぎられた海女を島に上げ、珠を発見する。

不比等と房前は奈良の都へ去り、屋敷だけが残された。


奈良の都

a 東大寺

不比等の屋敷。幼児の房前が父不比等の前に緋の袴姿で立つ。

宝珠を収めた釈迦如来像を安置する興福寺。

龍王が珠を守護するために移り住んだ猿沢の池。

龍王が移住して空になった龍宮。

十三歳の房前が不比等から詳しい事情をきく。


志度の浦

房前が志度を訪れる。

房前一行が海女である母の墓を発見。

海女供養のために修造された志度寺(南大門、三重塔、堂舎)の堂前で舞楽が奉納されている。

志度寺の海辺に建てられた石塔群。